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[05.06/]
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昨日は妹の高校の文化祭のオープニングに行ってきました。
文化祭を見に行ったはずなのに気付いたら妄想に励んでいました。
もうなんかね、あの熱気というかひたすら若い感じ!ブロック長とか生徒会長とかの羽目を外したハイテンション!あと外部からしたらよくわかんない内輪ネタ満載の寸劇の数々!そして今日はまあ仕方ないかっていう先生たちの苦笑!!
もうなんかうらやましくて!すごいうらやましくて!
そんなことを考えていたら妄想が煮えたぎって。
久々のSSです。久々過ぎて文章がなかなかまとまらないよ!
あと私は生真面目苦労人×フリーダム小悪魔が大好きだよ!

・黒ファイ(風味)
・高校生パラレル
・ファイがフリーダムすぎる
・黒鋼はひたすら生真面目で苦労人
・唐突に始まって唐突に終わるよ!
・内容?なにそれおいしいの?
・俺(達)、参上

本文は続き↓に。


ラストサマー・ラストラン







九月―――暦の上ではとっくに席を譲っているはずの夏の太陽が未だしぶとく天球にしがみ付いている頃。暗幕を締め切った講堂に立ち込めるもったりと湿った熱気とは裏腹に、生徒たちの表情は待ち受けるつかの間の非日常に浮き足立っていた。
普段ならば静寂をもって満たされるべき学び舎も、こうして見れば春を謳歌する青少年の集い場でしかない。あちらこちらで交わされる歓談は、マイク越しの進行の声を遮るほどではないが止むこともなく、このときばかりはそれを咎める声が上がることもなく。暗闇の中でさわさわと蠢く人の群れと絶え間ないざわめきは時間の経過につれて緩やかに、しかし確実に範囲を広げ、今や会場全体に伝播している。
手作り感の溢れる揃いの団扇に、ブロック単位でまとまった色のタオル。照明を落とした薄闇の中でもそれらははっきりと、彼らの高揚とこの三日間にかけた思いを表明していた。



『校長先生、ありがとうございました―――』

はたして聞いていたのかいないのか、壇上で一礼した校長の随分と寂しくなった頭頂部におざなりな拍手が投げかけられる。精一杯の受け狙いだったのだろうか、一昔前に流行語を残し流星のように姿を消した芸人によく似た派手な蝶ネクタイのスパンコールが場違いに鮮やかなのが無情に物悲しかった。



『―――それでは次に、実行委員長、どうぞ』


暗転した舞台に、少々年季の入ったアンプを通して放たれた進行役の声。
決してクリアとは言えないその響きに、ざわめきが静寂に変わる。そしてその静寂は一瞬の後、スポットライトの光筋が舞台袖から現れた人影を捉えた瞬間に、男女両声入り混じった歓声へと変わった。

「――あー、文化祭・体育祭総合実行委員長、3年6組諏倭だ」

マイクテストのつもりなのか、律義にも集音部を数度叩いてから電波に乗せられる低い声。教師と並んでも見劣りしないであろう大柄な体躯に、一点集中の光の中では少々鋭すぎる目付き。素性を知らない人間であれば思わず道を譲りたくなる、簡単に言えば一見非常にガラのよろしくない彼は、正真正銘この三日間の祭りを取り仕切る、学生のトップである。
同時に校内どころか近隣の学校でその名を知らぬものはないであろう、この学校の名物生徒その一であった。
もちろん悪い意味で、ではない。鍛えられた身体を裏切らず非常に腕っ節は強い彼であったが、それは幼いころから続けてきた武道の賜物であり、その道での功績が彼の名を知らしめている一因である。また、顔に似合わずというと言葉は悪いが彼の交友関係はそこそこ広く、その性格に起因して周囲からの信頼は篤い。こうして生徒を統括する立場へと彼を推したのもその人望と、道を行う者にとって最も基本であり最も得難いものであるといえる、実直で真摯な姿勢が評価されてのことであった。

「…、それでは開催にあたっての留意事項を説明する―――」

名乗りを上げた後、一瞬奇妙な表情で固まった彼は自分の足許に置かれたアンプを見やる。そして数瞬考えるように沈黙したのちマイクを握った左手がすいと下がった。
元より通りのいい声質で声量も十分すぎるほど豊かな彼には本来ほとんど必要のない装置ではあったが、この実行委員長、見かけの豪快さとは裏腹になかなか几帳面で真面目な性格、そして超のつく機械音痴なのだ。やたらとマイクを遠ざけた上普段より抑えられたような声音なのは、今までの流れからマイクを取ったものの機械で音量を調節することができずに自力で音量を下げるというアナログな方法を選んだ結果だろう。

スポットライトが眩しいのか一層険しく眇められた目元に掌で影を落としながら、留意事項を読み上げる生真面目な姿にひゅうっ、とどこからか口笛が飛ぶ。儀礼的にはもっともなことではあるがやはり項目も多く堅苦しい話に再びざわめきが大きくなり出す場内に、眉間の皺が一層深くなり始める。
もう残りは数項目、一回ぐらい静かにするよう促すべきだろうかと考えた瞬間。



「んもう黒様ってばカタい!カタくて長いー!」



突如電波に割り込んだ呑気な声音が、実行委員長の渋面も、生徒たちのざわめきも、進行役の冷や汗も何もかもを華麗にぶち壊した。

とっさの反応で半身を捻った黒鋼の後ろ、緞帳の合わせから奇術のように金色の頭が覗いている。

「この後オレのお話ひかえてんのー!そんでここすっごい暑いの!」

勝手な台詞を吐きながらするりと緞帳の合わせが開かれ、生首もどきが壇上に全貌を現す。
その姿を見とめた瞬間、水を打ったようにとしか表現できなかった会場内が沸き立った。
先の歓声より少々音域が高い気がするそれは物事の順番やら何やらを綺麗さっぱり踏み倒して壇上に躍り出た、この学校の生徒会長にして名物生徒その二、ファイ・フローライトに向けられたもの。
金髪碧眼眉目秀麗、人当たりも良く人望もあり、傾向に偏りはあるものの成績も文句なしに優秀、現在ものんびりと手など振って歓声に応えている、一見して完璧超人な彼は、しかし残念なことに結構な暴君としても名高いのであった。それも、現在壇上で固まっている大柄な生徒―――黒鋼に対してのみの暴君として。
彼らが主にセットで名物生徒として扱われ始めたのがはたしていつのことだったのか、彼らと同じ三年でも詳しく覚えている者はいない。気付いた頃にはすでに二人であり、本意不本意は知らねどそろそろ夫婦漫才の様相を呈してきた、というのが近しい者たちの認識である。先程の、声音によっては邪な妄想を掻き立てられかねない台詞も、おそらくは夫婦漫才と称される類のじゃれ合いなのであろう。

「みんなわくわくしてるんだしもっとこう、気楽に手短に行こうよぅ」
「邪魔すんな!」
「ああん乱暴ー」

平静を、とはいかないまでもいくらか冷静さを取り戻した黒鋼が金髪の首根っこを掴む。当然の怒鳴り声に耳障りな音を立てかねないマイクは、じたばたと暴れる白い手にさりげなくもしっかりと奪い取られており、生徒たちの耳の安寧は守られていた。
強面で逞しい男と見かけだけは儚げな細身と、非常に不穏な組み合わせではあるが、ある意味では見慣れた景色であり、この後の展開に何ら心配を抱く必要がないと分かっている生徒たちにとってはそれこそ夫婦漫才なのだろう。
どうにか金髪を捕まえ大人しくさせた黒鋼が残りの数項目を早口で言い終える頃には、生徒たちの関心は完全に壇上へと戻っていた。
渋面で見降ろせば、脇に捕まえられた恰好のまま妙に大人しくしていたファイが顔を上げる。その唇が象った確信犯な笑みに、思わず溜息がこぼれた。
無言でマイクを差し出せば、難なくホールドを抜け出した白い手が心得たように伸ばされる。

「じゃあついでにオレも話しちゃうねー。」

(わざとやったな)
マイクのコードを翻し、軽いステップで踏み出した細い背中を眺めて黒鋼は再び溜息をついた。
残り僅かとなって途切れだした生徒たちの集中力を再び集め、残りの話を手短に終わらせる。教師と進行役は多少ひやひやしただろうが、生徒たちには余興と受け取られる形でさっさと面倒事を終わらせてしまった。若気の至り、お祭りムードの盛り上がり、そんな言葉で少々の粗相は許されそうなこの雰囲気では、小言を食らう心配もないだろう。
結果として誰も不快な思いはしていない。この蒸し暑い中余計な運動をさせられた自分以外は、だが。


二言三言で話をまとめ、早期解散を決め込んだ会長に、再び場内が沸く。振り返った満面の笑顔に、知らず唇が緩んだ。


今年最後の猛暑となるであろう、三日間が今、幕を開ける。







渋い顔をしながらも舞台を下りずファイを待つ黒鋼の姿に、一部の女子が邪な情念を燃やしていたのはまた別のお話。
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